「日本最難関ルートを連続で越え、最後は北アで最も美しい山で締めくくってやろう」
昨年秋と一週間前に雨で流れ、温められ続けたこの縦走計画は「バイトを後輩に投げつける」という先輩の端にもおけない行為により実現した。
一日バイトかわったので大目に見てくれると嬉しい
この縦走の記録
https://www.strava.com/activities/5864243891
https://yamap.com/activities/12720666
槍ヶ岳・穂高岳・上高地-2021-08-26 / はかきういさんの赤岩岳(岐阜県)・大喰岳・ジャンダルムの活動データ | YAMAP / ヤマップ
ルート
穂高岳山荘から涸沢岳、北穂高岳、大キレット、南岳、中岳、大喰岳を越え、槍ヶ岳山荘にて宿泊。時間があるので槍ヶ岳も登ってしまう予定。
槍ヶ岳山荘から槍平小屋を経由し新穂高温泉に帰還。
槍ヶ岳・穂高岳・上高地-2021-08-26 / はかきういさんの赤岩岳(岐阜県)・大喰岳・ジャンダルムの活動データ | YAMAP / ヤマップ
核心部
まず一日目のジャンダルム。北アルプス屈指の最難関ルートと呼ばれ、滑落死者は数しれない。
特に「馬の背」というナイフエッジ上を渡るルート。幅数十センチ、落差数百メートル。滑落すればヘルメットなど関係なしに命はない。
次に二日目の大キレット。日本三大キレットのひとつで、こちらも滑落すれば命はない。
誤差みたいなものだが、最後に槍ヶ岳直下の急登を登りきればほぼ完結。3日目は槍平に向けてダラダラ尾根を下ることとなる。
ルート以外の不安点として、通常前日にロープウェイを登り、一時間歩いた先の西穂山荘で一泊。翌朝早朝からジャンダルムを越えるのだが、前日学校の予定とバイトがあるため、どうしてもロープウェイの最終便に間に合わない。
そこで当日始発に乗ることにしたのだが、この時間が8時。運転し一時間の道を歩いた体力消耗と、西穂山荘を9時発という登山においてはありえないくらい遅い時間に出発することになる。
果たして生きて帰れるのか。
新穂高ロープウェイ
始発は8時。新穂高温泉駅から乗ると1700円。8kg以上の荷物を持っていると+300円かかる。
標高2156までわずか25分で上がることが出来る
また、数ある駐車場のなかでも「第三駐車場」新穂高温泉の駐車場マップで「P5」と示された場所はロープウェイから近く、無料で止めることができる。
ただし、平日木曜日でさえ、朝7時に車を止めて最後の二台目だった。
無料で近い駐車場に止めたい人は、前日入り、もしくは超早朝に駐車してしまうことを勧める
始発のロープウェイは、8,9月の登山シーズンの金土日は8時ではなく7時になる。早めに行動したい人はHPを確認して早朝からロープウェイに乗ってしまうことをお勧めする
頂上駅の展望台は西側に開けており、笠ヶ岳が一望できた
西穂高山荘
頂上駅から一時間ほどで西穂高山荘が見える。
焼岳が近くに見えた。下には上高地を見下ろすことができる。
西穂からジャンダルムに行きたい方はここに前泊し、翌日早朝に出発することを勧める。コロナ渦の2021年九月現在は、HPの予約フォームから登録する必要がある。
西穂高岳
山荘からは東に蝶・常念。西に笠ヶ岳を眺めながら稜線を進む。
独標までは簡単な山歩きだが、独標から西穂はやや難易度が上がりテクニカルな岩場が増えるので油断は禁物。ヘルメットの着用を勧める
山頂からは笠・奥穂・常念と四方の山々が見えるはず..(何も見えなかった。)
ジャンダルム
西穂山頂から間ノ岳・天狗岩を経由しジャンダルムにかけて急に難易度が上がる。いきなり垂直の岩場を下されるもんだから、今後の道中の厳しさを覚悟した。
そこから先も間ノ岳がどこだったのかもわからないような危険な岩場を何度も越えた。
個人的に歩行技術で意識した点は三つ。
岩場を歩く基本技術。
常に手足の四本のうち、三点は設置させながら身体を可能な限り固定し移動する。
慌てず行けば滑落する危機感を感じることもなかった。
特に岩場で恐怖を感じるのは下り。垂直壁を何度も下るので手よりも先に足が先行することも多い。
そんな時、慌てず足の感覚で探って足の置き場を探すのではなく、おなかの前に空間を作り、足を確実に安定した場所にのせていく
手足を置く石が大きな岩ではなく、上に乗っかっているだけだったとき。それを信頼して掴み、離れたときには最後。滑落するだけ。
手足を置こうとする岩が不安定の可能性があれば必ずつついてチェックし、浮石は絶対に掴まないように意識した。
あとはガバといって、指の第二関節を曲げて強く保持できる岩の形状を探して掴むようにした。
岩場の移動法は細心の注意とボルダリングで培った技術を駆使すれば何ら問題なかった(ボルダリングなど行っていなくても、上記三つの技術があれば問題なく行ける
ただし、個人的に最も難易度が高いと思った点は「道が分からない・見失う」こと
一般登山道でないだけあってどこも一様に歩きにくく、マークを追いかけていないと道を見失う。
それでいて、次のマークが岩の反対側にあり、進んで振り返らないとルート確認ができない場所ばかりだった
遭難につながりかねない。
とにかく、ルートのマークを探すことを怠らないように。
そもそもこのマークは岩の裏側にしかない場所が多いことを考えると、奥穂から西穂に向かうためにつけたと考えられる。
西穂から奥穂に向かうと、疲れ切った最後に最難関「馬の背」を越えなければならないので、奥穂ー西穂ルートをお勧めする。
このように、細心の注意を払って進み続けたので、体力よりも精神が擦り切れた。
ジャンダルムでこの危険地帯を突破した者だけが出会える「天使」に出会えた時は感動した。
また、地図上ではジャンダルム山頂から最短距離で奥穂を目是せるらしいが、著者が訪れたときは使い古したザイルと垂直の壁しかなかったため、来た道を戻りトラバースした。
馬の背
ジャンダルムー奥穂間、西穂から奥穂を抜ける最後に待ち構える最難関ルート。
この写真の稜線上を進む。
落ちたら一発死亡
さすがは「馬の背」で検索すると検索候補の最上位に「滑落」がついてくる場所なだけはある。
ナイフエッジ上を慎重に渡る。
ここも、体を常に安定した体制になるようにすれば生きて通過できる
「馬の背」
— こばたく@自転車放浪記 (@smaileciyrcle) September 1, 2021
滑落即死のナイフエッジ#ジャンダルム pic.twitter.com/Jkra4JcYZx
奥穂高岳
馬の背を通過すれば到着。
消して簡単な山ではないが、たどり着いたときに安心感が半端なかった
穂高岳山荘
ここを下れば穂高岳山荘に到着。
8時半から17時まで。計12時間に及ぶ道中だった。
記事冒頭にも書いたが、西穂高山荘に前泊することをお勧めする。
分かっていてどうしようもなかったとはいえ、五時に山小屋に到着するような工程を組むのは控えた方が自分の身のためだと思う。
この日の小ネタ、日記はこちら
https://smaileciyrcle.com/umanose/
新穂高温泉に車を置き、ロープウェイで西穂山荘へ。そこから西穂高岳、ジャンダルム、奥穂高岳へと稜線を渡り、穂高岳山荘にて宿泊