液体の簡易ワックスと固体のホットワックスがあるけど、なんで手間をかけてホットワックスをかけた方がいいの?
ホットワックスかけているんだけど、全然思ったように走らない
著者はスキーを始めて5年。
現在はスキーの聖地長野県白馬村に籠ってスキー場で働きながら毎日スキーをしていますが、仕事仲間と滑る時にいつでも自分の板だけが、圧倒的に走っていませんでした。
しかも3日に一回はワックスをかけていたにも関わらず、です。
この悩みをプロスノーボーダーの仕事仲間に相談したところ、一つの大きな要因として、ホットワックスの掛け方が大きく間違っていることが分かりました。
しかも、今回の話を聞いて驚愕したことは、
「ネットで検索して上位に出てくる掛け方は、間違えているとは言わないが、重要な情報が抜けている」
ことがわかりました。
さらに..!
1シーズン様々なスキー/スノボ関係者に話を聞く中で、
「ワックス掛けに絶対正解はなく、NGなことすら人によって違う」
という曖昧な要素が非常に多いということが分かりました。
今回はそんなプロスノーボーダーに聞いた、ホットワックスのかけ方を軸に、曖昧な要素も全て述べた上で実際に1シーズンワックスをかけてきた私個人の見解を踏まえ、徹底解説とさせていただきます。
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こばたく
ちゃり旅登山スキーを生業とする社会人のフリした永遠のちゃり部員
自転車旅歴10年目 21カ国 47都道府県を放浪
世界一周”夢ラン“19482km /日本縦断/四端制覇/キャノンボール/エベレスティング
夏は北アルプス在住 冬はFree styleテレマーカー
夢は奥さんと世界中を旅すること
1、滑走面のクリーニング
まず初めにソールについている汚れや古いワックスを除去します。
やり方はシンプル。
スクレーパーでソールを削り、その後ブラシをかけます。
黒い汚れが出てくるとともに、ソールについている汚れがなくなればOKです
こばたく
もしクリーニングワックスを持っているのであれば、ここでかけると良いでしょう。
こばたく
見落とされがちですが、
実はこの汚れ落としが最も忘れてはならない手順です!
スクレーパーやブラシでソールを磨くと、黒く細かい汚れが出てきます
クリーニングの必要性
板が走らなくなる一番の理由は、ソールに汚れが付着するためです。
ソールに汚れがつくと、雪面と触れている部分は、滑るように作られたソールではなくゴミなので、走らなくなります。
よって、ごみの除去はワックス掛けの前に忘れてはいけない手順というわけです。
シーズン中のリムーバーはおすすめしない
リムーバーとは、汚れを落とすスプレーのことです。
シーズン中において、リムーバーは使用しない方が良いとのことです。
理由は、今までソールに浸透させてきたワックスが全て落ちてしまうから。
板は何度もワックスをかけることで、ソールに浸透させ、”育てるもの”だそうです。
つまり、リムーバーをかけてしまったら、何度もソールに浸透させてきたワックスを全て落としてしまうことになります。
ワックスは汚れの付着も防いでくれます。
よってリムーバーをシーズン中にかけることはお勧めしないとのことです。
こばたく
ただしこれも一説!
最近のリムーバーならば損等させたワックスまでは落ちないという人も多いよ!
クリーニングワックスもおすすめ!
もちろんブラシによる汚れ落としは必要ですが、汚れを落とせるワックスも存在します!
ブラッシングをしてから、ワックスを塗って、時間をおかずに即剥がすことで、ソールに浸透したベースワックスを落とさずに、汚れを綺麗に落とすことができます
こばたく
ドミネーターからは、ベースワックスと兼用のクリーニングワックスが出ています。
さらに、汚れが付着しにくくなる「グラファイト」という素材が入っている一石三鳥なので超お勧めです!
2 ワックスの塗布
ソールの汚れを落とせたら、いよいよワックスをかけていきましょう
こばたく
ここにも間違えると板を壊しかねません!
よく読んで正しい手順でワックスをかけていきましょう!
2−1 ソールにワックスを塗る
まず固形のワックスをアイロンに一瞬だけ当てることで表面を溶かします。
その後固形ワックスをソールにムラなくに塗っていきましょう
このようにすることで、ワックスを薄く塗り広げることができます。
固形ワックスをアイロンに当てた後、”固形ワックスを”ソールに当てワックスを塗り広げていきます
ワックスをソールに塗った状態
薄く全体に塗れている。
こばたく
「アイロンから垂れたワックスをソールに落として広げる」
というやり方を紹介しているサイトも多いけど、個人的にはここで紹介した「少し溶かした固形ワックスを広げる」やり方の方が、遥かにその後ワックスを塗り広げることが簡単だったよ!
”薄くムラなく”は重要です!
ソールに浸透しなかったワックスは削ぎ落としてしまうため、ワックスは薄くムラなく塗りましょう。
ワックスを無駄遣いしないことや、ワックスのゴミが最小限にすることで掃除が簡単になるというメリットにつながります。
ソールに当てるのは、アイロンではありません!
ソールに当てるのは、アイロンではなく固形ワックスがよさそうです
確かにアイロン側にも溶けたワックスが付着していますが、ソールに対して高温すぎる熱を加えると、ソールが死んでしまいます。
ソールが死ぬリスクを下げるために、ここでワックスを塗り広げるのはワックスにするようにしましょう。
こばたく
アイロンについたワックスをソールに広げるという人は、僕が会った中では一人もいませんでした
アイロンは温度設定ができるものがおすすめ!
固形ワックスにはそれぞれ適正温度や限界温度があります。
これはそのワックスが溶け、ソールに浸透させるのに適した温度だったり、それ以上に温度を上げてはいけないというものです。
この温度通りにアイロンをかけるためにも、温度設定が可能なアイロンを選ぶようにしましょう!
こばたく
安価なアイロンは、「冷めたら温め直す」という仕組みのため、温度が安定しないので、お勧めできないそうです!
2−2 ワックスを塗り広げる
適正温度に設定したアイロンをノーズからテールの方向に沿ってなぞることで、ワックスを塗り広げていきます。
ムラなくワックスが均等に広がるまで、じっくり時間をかけて行うようにしましょう
これにより、ソールの表面に塗られただけであったワックスがソールに浸透し、簡単に落ちなくなります。
ノーズからテールの方向にアイロンを当てることで、
先ほどソールに塗ったワックスを広げていきます
こばたく
溶けたワックスがアイロンに10cmほど追従していく程度のスピードでアイロンをかけていくといいそうです!
滑走に影響するのは、表面のワックスではなく、浸透したワックス
ワックスはソールの表面に付着しているものではなく、ソールに染み込んだものが滑走に影響します。
つまり、表面に塗られただけの固形ワックスは滑走の妨げにしかならないようです。
アイロンの高温設定に注意!
アイロンの設定温度は、必ず塗る固形ワックスの適正温度に設定するようにしましょう!
温度が高すぎると、ソールが焼けてしまいワックスが浸透しなくなります

「黒くてかっている」部分は焼けてしまっています
(写真は良いものが手に入らなかったので、手に入り次第更新します)
光を当てて、他の部分と比較し「てかっている」ならば、その部分は焼けてしまっています..
こばたく
万が一焼いてしまった場合、深く焼いていなければチューンナップで解決することもあるあるそうです
こばたく
チューンナップでソールの表面を削れば、焼けた部分が落とせるってことだね!
短時間の2度かけは絶対に禁止!
一度アイロンを当てた場所に、その直後に2度掛けすることは絶対にやめましょう!!
一度温まったソールは、もう一度アイロンで熱を加えてしまうと、簡単にその部分が高音になってしまうため、ソールの成分が溶けてしまいます!
基本的には、一度のアイロンでワックスをムラなく広げるようにしましょう!
もし一度で広がらなかった場合は、ソールの温度が人肌以下に下がってから、極力アイロンを早く動かし広げるようにしましょう!
こばたく
僕はこの情報を知らず、板を焼いてしまった故、どんなにこまめにワックスをかけても誰よりも走らない板になってしまいました..!
本当に、気をつけてください!
ワクシングペーパーの要否は使用するワックスによる(?)
固形ワックスには、直接アイロンでワックスを塗り広げて良いものと、ワクシングペーパーで広げる必要があるものがあるそうです。
ただ、ネットで調べた感じではワックスによるわけではなく、「硬いワックスならば直接アイロンを当てないと溶けない」が真相かなと思っています。
ただし、ペーパーを使えばゴミがとても綺麗に落ちるので、僕はペーパーを使うのが好みです○
こばたく
ガリウムのワクシングペーパーはやたら安いのがあったよ!
ブレーキを上げておくと簡単!
スキーの場合、紐等を用いてビンディングのブレーキを上げておくと、ブレーキの部分にアイロンが引っかからないので作業が簡単になります!
ブレーキがソールよりもトップシート側に来るよう上げておくと、ワックス掛けがかなり容易になります
3 放置
ワックスが滑走面に浸透するよう、しばらく放置して冷却します。
スノーボードの場合、トップシートが人肌程度に冷めるまで放置します。
スキーの場合は板が厚いため、トップシートまで温度が伝わらないため、時間にして1時間程度が目安となるそうです。
こばたく
この時間を確保することが面倒に感じるかもしれませんが、
放置しないとワックスがソールに浸透しません。
放置する時間は確保してワックスをかけるようにしましょう。
部屋は暖かくしよう!
放置する時、ワックスをかけた板を置く場所は暖かくするようにしましょう。
これは、ソールにある細かい穴の深くまでワックスを浸透させるためには、暖かい温度を維持した方がいいためです。
4 余分なワックスの除去
十分に板を放置したら、ソールに浸透しなかった余分なワックスを削り取ります。
スクレーパーとブラシを用いて、大半の余分なワックスから、細かいワックスを落としていくイメージです。
4−1 スクレーピング
初めにスクレーパーで大半のワックスを落とします。
ワックス掛けの時と同様、ノーズからテールの方向に、スクレーパーを擦ることでワックスを削りとるようにしましょう。
ソールに浸透していないワックスは落として良いので、ワックスがでなくなるまでスクレーピングするようにしましょう
こばたく
色々なスクレーパーを借りたけど、幅が広くカーボン性のスクレーパーが一番削りやすいと感じました〜!
スクレーピングが、一番時間をかけるべき工程です!
今回紹介するどの工程よりも、このスクレーピングに時間をかけましょう!
理由は、ソールに浸透していないワックスは滑走性を落とし、ゴミを拾うだけであるからです。
こんな滑走に悪影響を与えるものは可能な限り落とさなければなりません
ブラッシングでも落とすことはできますが、最も効率よくワックスを剥がせる工程はここ!
なので、何度も何度も、スクレーパーでワックスを落としましょう!
こばたく
プロは手が腱鞘炎になるまで、2~3時間スクレーピングをし続けているそうです....
スクレーパーは紙やすりで削ろう!
この工程でワックスを剥がす場所はスクレーパーの角
つまり、角がなくなったらワックスは剥がせないということです。
よって、こまめにスクレーパーの削る面を紙やすりで削ることで、常にスクレーパーに角がある状態でワックスを剥がすようにしましょう!
こばたく
ワックスの箱など、垂直なものを添えながらスクレーパーを削ることで、綺麗に角ができるよ!
下に紙やすり、その上に垂直が出るものを添えてスクレーパーを削ると、角が直角になる
ブレーキを上げておくと簡単!
ワックス掛けの時と同様、スキーの場合はラバーバンド等を用いてブレーキを上げておくと、ブレーキの部分にスクレーパーが引っかからないので作業が簡単になります!
ビンディング下のスクレーピングは入念に!
ビンディング下のソールのスクレーピングは特に入念にやりましょう!
理由は、ビンディング下はソールが湾曲し、平面が出ていないことが多いからです。
足からの負荷が最も強くかかる部分は、使っているとソールが変形してしまうようです。
平面が出ていないと、スクレーピングしても湾曲した「凹」の部分は削ることが来ません。
適切なやり方は出てこなかったのであくまで参考ですが、僕はスクレーパーの側面を使って削ったり、致し方なく滑走方向と垂直にスクレーピングすることで落とすようにしていました。
写真だと伝わりにくいですが、
ビンディングのネジ穴(特に負荷がかかる部分)に沿って
板が湾曲しています。
テレマークは特に顕著にこの症状が出るそうです
4−2 仕上げのブラッシング
スクレーパーで余分なワックスがでなくなったら、次はブラシを用いてより細かい余分なワックスを落としていきましょう
ブラシで滑走面を磨き、滑走性を高めます。
ブラシを複数持っている場合、ブラシの毛が硬いものからワックスを落としていくようにしましょう。
硬いブラシでワックスがでなくなったら、柔らかいワックスでさらに細かいワックスを落としていくイメージです。
こばたく
ブラシは粗悪品との差が小さいものなので、安めのもので十分だと思われます!
ロトブラシを使うと簡単!
手で擦るブラシが一般的ですが、ロトブラシと呼ばれる電動でワックスが落とせるブラシも存在します!
高価ですが、ワックス掛けにかかる労力と時間は大きく短縮できるので、予算が許すようであれば購入を勧めます!
おまけ 〜ワックスが浸透する仕組み〜
ポリ製のソールにワックスが浸透するってどういうことなの?
と思った方向けに、ソールにワックスが浸透する仕組みを説明します。
まず、ソールには大きく分けて「シンタード」と「エクストゥルード」の二種類があります。
これから述べる、ワックスが浸透するのは「シンタード」のソールになります。
シンタードは粉末状の素材を高圧・高温で圧縮して成形したソールで、細かい孔が多くワックスを吸収しやすい構造になっています
固形ワックスは、この”細かい孔”にワックスを浸透させることができるため、ワックスが長持ちします。
ワックスを塗った後暖かい場所に放置すると浸透したり、
何度もベースワックスを入れると”板が育ち”、その後雑にメンテナンスしてもある程度は板が走るのは、
細かい孔にワックスが浸透しているからなんだね!
シンタードとエクストゥルードの違い
シンタード | エクストゥルード |
粉末状の素材を高圧・高温で圧縮して成形し、細かい孔が多くワックスを吸収しやすい構造 | プラスチックを加熱して押し出し成形され、密度が高く滑走面が滑らかでメンテナンスが簡単。 |
こばたく
エクストゥルードのソールはワックスは浸透しないので、すぐ剥がれてしまうけど、ノーメンテナンスでの滑走力が高いので、海外やハイシーズンでの使用はおすすめらしいよ!
まとめ
いかがだったでしょうか。
正しいホットワックスの掛け方が分かりましたでしょうか。
最後に、今回説明したワックス掛けの手順を振り返っておきましょう
こばたく
クリックするとそのやり方を説明している部分に飛べるよ!
この記事を見ながら正しいホットワックスの掛け方を実践してみましょう。
きっと、次に滑りにいくときに「本当に同じ板なのか..!?」と思うほど板が走るようになっているでしょう