2021年9月。
大学生最後の年の夏休み。
その行き先は北の大地北海道に決めた。理由は北海道大自然に魅せられたから。
大学生活の居場所として「サイクリング部」を選んだ私は、一年生の夏に同期との初めての二週間の長期ツーリングで北海道の広大な大自然の虜になった。
それから毎年2度の頻度で北海道に足を運んでいた。
長期で休みが取れる最後の年。自転車では既に北海道中をほぼ旅し尽くしてしまっていた私は、山の上から北海道を楽しむことにした。
その行き先は北海道のど真ん中、大雪山・十勝連峰。
今回は、自転車旅で出会った友人と、旭岳、トムラウシ山、十勝岳の三つの名峰を繋ぐ三泊四日の縦走の記録を振り返ろうと思う
Day0~移動日~
昼頃旭川駅にて今回の縦走をともにする友人と合流。
当然のように二人とも自転車を持ってきていた。北海道の広大な大地を感じるのに自転車は最適な道具というわけだ。

自転車で移動しながら、登山にも行けるハイブリッド仕様だ
この自転車は下山後に宿泊予定のホテルに預かってもらい、登山道具を持ってバスに乗車。
翌朝乗るロープウェイの麓にある東川旭岳青少年野営場にて前泊。
まだ9月であるにもかかわらずぱらつく雪をみながら露天風呂に浸かった。その後北海道の限定ビール「サッポロクラシック」と北海道のご当地コンビニ「セイコーマート」で買ったご当地飯を食うことで、最高の前夜祭になった。

Day1~旭岳、白雲岳避難小屋~
厚い雲がかかったあいにくの天気。午後からは天気が崩れる予報だったので早めに出発。

美しい湖の周りには噴煙がたち登るという、大自然が融合された景色を眺めながら山頂へ。
登頂の1時間前には視界が1mも見えないほどガスに覆われてしまった。
あたりにちらほらと雪も積もっているような気温でのガスは身体に応えるので、駆け足で避難小屋を目指す。
この日宿泊した白雲岳避難小屋は宿泊のための協力金¥1000を払うとこの小屋限定のバンダナをもらうことができる。
これがこの山域限定の「ナキウサギ」が描かれており非常におしゃれ。このバンダナはこの旅のみならず、ぼろぼろになるまで使い尽くした。

翌日朝まで天気が大きく崩れる予報だったのでこの小屋でのもう一泊も覚悟して投宿。
建て替えたばかりの非常に綺麗な小屋の中には北海道を舞台とした漫画「ゴールデンカムイ」がずらり。
10巻以上を読み尽くしたにもかかわらず、続きが気になって仕方なく、後ろ髪を引かれる思いで翌日出発したのはナイショ。

Day2~ヒサゴ沼~
悪天候の予報が少し早まり、昼頃避難小屋を出ることができた。
辺りの紅葉と遥か下の谷沿いの雪渓という、本州ならばみられないようなコラボレーションをした景色を眺めながら進む。
時より太陽が顔を覗かせることもあった。

ついでに北海道の山を登るからには覚悟していた「ヒグマ」も目撃。
はるか数百メートル下の原っぱを2頭の小熊が無邪気に追いかけっこしていた。
「追いかけられたら逃げられない」
分かってはいたこの事実を、無邪気な小熊によって思い知らされたのであった。
この日はヒサゴ沼という池のほとりの避難小屋にて宿泊。
この地の狐が持つ「エキノコックス」という菌を避けるため、北海道の山では浄水器に通した水を飲むことが鉄則。
登山用の小さな浄水器に何度も池の水を通すことで飲み水を確保する様は、北海道の山でサバイバルをしている事実を感じてテンションが上がった。

Day3~トムラウシ山~
3日目にして朝イチから晴れ模様。
ヒサゴ沼から雪渓の脇を登って行くとトムラウシ山の山頂。
この広大な土地北海道を、そのど真ん中の山から見下ろしている優越感に酔いしれた。
この縦走で最も景色が良く、気持ちのいい時間だった。

その後の景色も本州ではみられないレベルのものだった。
標高2000mの世界にある小さな池のある草原をエゾシカが走っていた。この景色が私には楽園そのものに見えた。

この日はこの縦走唯一のテント泊。ヒグマがやってくる恐怖に怯えながら夜を明かした。

Day4~十勝岳~
縦走最終日は十勝岳へ。
これまで草原や紅葉だった景色が一変し、火山岩に覆われた植生の一切ない火星のような風景に。
山の上をたった4日間、1日10数キロ移動しただけでここまで景色が変わるのか。と驚かされた。
山頂付近は火山岩が砂のように小さくなったことで、足を取られ、とても登りが辛かった。

降りは遠く下にあった富良野の街を見下ろしながら下山。
下山後の4日ぶりの温泉と、旭川に戻ってから食べたジンギスカンは本当に美味しかった。
ただ街で生活していたら当たり前のことが、何倍にも幸せに感じることは、自然で遊ぶことの大きな魅力の一つだと、改めて感じた。

まとめ
雪渓から紅葉、火山岩とたった4日間の移動とは思えないほど大きく風景が変わる縦走路だった。
住まいのある長野県を中心に日本全国の山を登ってきたが、こんなに様々な自然を感じながら登山ができる山は他にない。
また、ヒグマやエキノコックスの対策のようなサバイバル要素も含んだ登山も、自分が自然と戦っている感覚になり振り返ってみるととても楽しかった。
北海道の大自然に魅せられた人はぜひ一度、足を運んでみてはいかがだろうか。